AI、ロボット、IoTなど、デジタル化を示す言葉を聞かない日はありません。こと製造業において、IoT化は生産性向上のカギとされ、注目されている技術者・経営者も多いでしょう。
IoTでセンサーからデータを受け取るデバイスとしてRaspberry Piが注目されています。教育用のシングルボードPCとして作られたRaspberry Piは、はたして製造業のIoTデバイスとして適切なのでしょうか?
製造業のIoTデバイスとしてRaspberry Piは使える?
結論として、製造業の現場にIoTデバイスとしてRaspberry Pi(以下ラズパイ)をしよすることは、情況により可能です。状況とは、ラズパイの耐久性を上回ることなく使用できる環境であれば、製造業のIoTデバイスとして使えるケースも出てくるということです。
大型装置の予知保全の為に、悪質な環境でデータを長い時間をかけて蓄積していくような使い方は難しいでしょう。ラズパイは教育用途で開発されており、温度やノイズ等の環境が悪ければ、その性能を発揮し続けることができません。
使い方によっては、毎日ラズパイの電源を落として帰るような使用法であれば、ある程度期待する動作は出来そうです。しかし、それもしっかりクーラーでCPU系を冷やしながら、大きすぎる負荷をかけない使い方が必要です。
調べてみると、ラズパイが壊れたという情報はいたるところで声が上がっています。また、本体は壊れなくともSDカードが壊れてしまうケースは多々報告されています。たしかに、SDカードの使い方として24時間の記録という使用法はハードすぎますね。
外部リンク:Raspberry Piは絶対確実に壊れます。壊れる前の予兆の一覧。
外部リンク:Raspberry PiのSDカードが壊れた!寿命を延ばす方法 5+1選!
Raspberry Piはプロトタイプとして優秀
製造業用のIoTデバイスは現在まさに黎明期で、これから雨後の筍のように様々なメーカーから発売されるでしょう。既に世界中で100社以上の扱いがあるようですが、性能も価格も様々。安いものでは3~4万円/1台ですが、高いものだと30万円/1台もするものもあります。当然耐久性、メンテナンス性などをメーカー独自に高めてありますが、いったいIoTデバイスにいくら出せばよいのか判断しにくい現状があります。
スマート工場EXPOのような大型展示会に行くと、それこそコンパクトで高性能なIoTデバイスが展示されています。しかし、中小の製造業にとって1台10数万円もするようなIoTデバイスを早速導入するわけにはいきません。
そこで、プロトタイプ(試作品)としての使用にラズパイの価値が出てきます。ラズパイでしっかり本番運用までの道筋を立て、取りたいデータを確実に撮れるようになるまでのトライ&エラーの期間こそ、ラズパイの高品質&低価格のメリットが出てきます。「まずセンサーからのデータを取ってみる」という最初の一歩を出しやすいデバイスです。
高温環境であったり、急なシャットダウン等のトラブルが心配であれば、ラズパイの使用感そのままに、耐久性を高めた「産業用ラズパイ」という位置づけの製品も出てきています。
外部リンク:産業用途で運用可能なRaspberry Pi
製造業IoTでRaspberry Pi導入の成功事例も多数あり
温度変化が激しかったり、機械油の飛ぶような環境でのラズパイ使用は厳しいと指摘しました。しかし、日本の製造業において、ラズパイ使用のIoTで成功している企業も多数出て生きています。下記紹介します。
外部リンク:ニュースイッチ-「身の丈IoT」中小企業こそ先行して導入するメリットあり
外部リンク:さくらのナレッジ-町工場がIoTで生産業務を大幅に改善。約3億円の設備投資と約1億円の労務費削減
外部リンク:GEMBAIT-導入の成功は「導入前」にあり? 町工場の稼働率を60%から80%にした「10万円IoT」キット
どの企業も、少ないラズパイという少ない投資で、ものすごい金額の成果を出しています。IoTの可能性を信じ、IoTを内製化したことで得られた結果です。やはり中小企業のIoTは内製化がカギになりそうですね。
ラズパイでの製造業IoTは「誰が、どう使うか」が成功への分かれ道になります。IoTを内製で始めよう!となれば、担当者は猛勉強が必要です。ネットワーク回りの知識、サーバーの知識、電気回路の知識、そしてプログラミングの知識です。IoTエンジニアはどこでも人材不足、ならば自社で育てよう、といった人材投資の精神が、製造業を救うのかもしれませんね。
さいごに
私自身も、ラズパイを自社で使っています。24時間起動し続けるような使い方はしていないため、産業用ラズパイへの乗り換えは検討していません。ラズパイは試作そして、プログラミングの学習時にも大いに役に立ちました。わずか6,000円のシングルボードPCでここまでできるとは驚きです。
IoTは勉強量は相当必要ですが、データ収集の自動化が自社でできることにやりがいを感じます。IoTはまず始めることが重要で、その始めるタイミングは今に他なりません。パフォーマンスのためのIoTではなく、生産性UPの為のIoTなのですから。
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