製造業のデジタル化ブームが叫ばれる昨今、このデジタル改革に乗り遅れまいと、中小の製造業の経営者・技術者も情報収集に余念がない事でしょう。
私自身も、たしかにIoTは日本の製造業を救うと確信しています。ただ、闇雲に取り組むIoT化および、必要の無いデジタル化には大いなるリスクが潜んでいるとも感じています。
中小製造業IoT化・デジタル化の課題とは
製造業デジタル化の課題
- 人材不足(誰がやるのか)
- 全体のコストが見えない
- IoT化・デジタル化のメリットが不透明
製造業でIoT化やデジタル化に取り組む際に課題となるのは、やはり誰がやるかということでしょう。IoT化にはIoTエンジニアと呼ばれるプロフェッショナルの力が不可欠です。そういった人材を抱える企業の力を借りながら社内改善に取り組む会社が多いのですが、コストを考えると、成果が見えにくいIoTにどれだけ投資してよいか判断が付きかねる状態でしょう。
また、コスト面でもいったいどれほどの投資でどんなリターンがあるのか不透明です。よほどIoT化やデジタル化に精通しているプロでなければ、取り組みの成果まで見通せるものではありません。
IoTを内製で取り組んで成果を上げている会社もあり、よし、うちもエンジニアを育てるぞ!と意気込んでもどのように育てるのか見当もつきません。そもそもIoTという時代のキーワードに踊らされているだけで、社内で取り組むべきことはまだ残されているのではないでしょうか?
私の会社では、IoT化・デジタル化に取り組む前に、徹底的にトヨタ式の改善を取り入れました。知恵を絞り、地道に愚直に取り組む改善です。改善が進んだラインは物が清々と流れ、無駄がなくなります。その段階でまだIoTでできることがあれば、チャレンジしてみるべきです。
本当に必要?デジタル化の前にやることがある!
[st-point fontsize=”” fontweight=”bold” bordercolor=””]あなたの会社では本当に今、IoT化が必要?[/st-point]
「IoTは第4次産業革命」などと聞くと、今取り組まなければ会社存亡の危機とまで考えてしまいます。実際取り組むことで、大きな成果を出している企業もあり、成功事例がそこかしこから上がってくる状況ではあります。
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しかしながら、どんな企業でも必ずしも成果がでるとは限らないのがIoTでもあります。社の問題をきちんと俯瞰してとらえることができ、その問題を解決しうるのはIoTだと結論付けられれば、IoTに取り組む価値はあります。この判断は難しいものがあります。
IoTは生産性アップのツールです。生産性をアップさせるツールは他にもあることを忘れてはいけません。日本の製造業は元来QC活動が得意で、長い歴史の中で改善をレベルアップしてきた背景があります。QC7つ道具など、身近な改善を推し進めるツールはすでに揃っているのです。こういった地道な活動を飛び越して、いきなりIoTだのペーパーレスだのを実施して、確かな成果は得られるでしょうか?
IoTの前にまだやるべきことがあるのが中小製造業の現状なのです。
IoT化やデジタル化による成果を最大化できる現場とは
[st-point fontsize=”” fontweight=”bold” bordercolor=””]IoT化・デジタル化に向いてる?!自社の生産体制に当てはめてみよう![/st-point]
IoTによるデータの分析、ペーパーレス化による紙帳票の削減。こういったデジタル化の成果を最大化できる現場というのは、日々同じ製品を大量に作っている現場、または同じ作業の繰り返しの多い現場です。
多品種少量生産のような現場では、IoTをするにしてもひとつの製品のデータが蓄積されるのに時間がかかります。つまり成果が出るまでに時間がかかり、コストがかかりつづけるということです。本当にIoTが必要なのか考えてしまいますね。
IoTで出てくる成果は、なにも稼働状況の可視化だけではありません。IoTのメリットをしっかり認識することで、今のラインをIoT化し、どんな成果を出していくのか「あるべき姿」がイメージできなくてはなりません。
ペーパーレスも同じで、たしかに紙が無くなれば資源の削減になります。しかし、PCやタブレットを増やすことになり、電気というエネルギー資源の使用量を増やすことになります。結局は何かと何かがトレードオフになります。その割合を鑑み、それでも効果が期待できる!となった段階でデジタル化に取り組んでも遅くはありません。慌てて必要の無いシステムを入れることほど愚かなことはありませんからね。
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さいごに
「IoTに取り組んでいます」「社内のデジタル化が進んでいます」などと報告で切れば、聞こえはよく、対外的にも力のある会社だと一目おかれるでしょう。しかし、実態の伴わない改善は改悪です。対外的なパフォーマンスの為にデジタル化をするのであれば、その資金をよっぽど社員に還元したほうが生産性は上がるでしょう。
投資すべきところ、育てるべき部署・社員を見誤らないよう、これからの製造業に必要なツールを選択していきたいものですね。
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